「木」へのこだわり「木」を巡る課題と
カリモク家具の取り組み
日本の山林の荒廃、林業の衰退。
日本は森林面積が国土の67%を占める森林大国ですが、国産材より安価で安定的に調達できる輸入材に押され、木材自給率は40%程度にとどまっています。林業といえば大半は、住宅用建材などに使われている針葉樹です。針葉樹林はほとんどが人工林で、「植えて育て、伐って使ってまた植える」ことを前提に生態系が成り立っていますが、利用量の減少によって管理が行き届かなくなり、森林が荒れる要因となっています。その結果、人と動物とが接触する場面が増えたり、雨水の保水能力が落ちて土砂崩れが起きたりと、様々な問題につながっています。
広葉樹はフローリングと家具が主な用途になります。しかし、高度経済成長期に輸出拡大で過剰伐採され、1990年代以降は資源が枯渇気味です。たとえ伐採されても、いわゆる「良質な木」と認められ家具などの用材として使われるのはわずか5%程度。残りの95%は、価格の低い木材チップになり、バイオマス燃料に使われます。バイオマス燃料はカーボンニュートラルなエネルギー源ではありますが、廉価なチップ販売だけでは持続的な林業経営が難しく、担い手が減り、山が荒れるという悪循環に陥ってしまいます。
日本は四季があり、北海道から沖縄県まで多様な気候があるため、生態系も非常に多様性が高くなっています。樹木の種類も1,200種類を超えており、個性豊かな木材が数多く存在していますが、それらの個性が十分に活用されているとは言い難いのが現状です。

針葉樹
- 建材・構造材用途
- 安価な輸入材におされ、需要が低迷し人工林が放置
- 管理が行き届かず土砂崩れなどが頻発

広葉樹
- 家具、フローリング用途
- 過剰伐採や針葉樹の植林で天然林が減少
- 良質な木がとれず価格の低い燃料チップに
製造過程の工夫で、
木材の価値を高める。
カリモク家具には、自然の恵みである木に感謝し、余すところなく活かす文化が根付いています。背景にあるのは、創業地である愛知県が、北海道や岐阜県、福岡県などの木製家具の産地に比べて木材資源が豊富ではなかったこと。また、国内木製家具メーカーとしても、カリモク家具は後発メーカーであり、木材資源の調達が容易ではありませんでした。
木から家具を製造するにあたり、木が生えている立木の状態のうち、家具として残るのは2~3割程度で、枝や樹皮は使えませんし、幹の部分も節や割れがあれば家具には使うことができません。貴重な木を無駄なく活用するために、カリモク家具は産地近くに工場を構え、自社で木材の“乾燥”を行ってきました。乾燥技術を磨くことで、乾燥工程の反りや曲がりが原因で廃棄される材料を減らしました。また、径の大きい立派な木だけでなく、小径木(細い木)や曲がった木など、一般的には家具製造に不向きと言われる木も、“木取り※”技術を磨くことで、積極的に活用してきました。そして、木材のクオリティーが満点ではなくても、チップ材ではなく家具用材の価格で林業従事者と取引することで、持続的な林業を支えてきました。それ以外にも、短尺材や端材を接着するフィンガージョイントや、カリモク家具独自の一般的な突板よりも分厚い挽板に代表される“接着”技術を磨くことで、余すことなく木材資源を活用しています。
我々の製造の工夫で、木の価値を最大限に高める努力を続けています。
- ※「木取り」=木材を、最終製品を見据えて必要なサイズにカットすること



お客様に、
多様な森林資源の
魅力を伝える。
日本には1,200種類を超える種類の木が生えていますが、家具として一般的に使われるのは、ナラなどのごく一部の種類に限定されます。日本国内での調達、家具製造にこだわっているカリモク家具では、多様な樹種が持っている個性を生かした製品を作成し、その魅力をお客様に伝えています。
例えば、クリはオーク材特有の美しい木目を持っており、経年変化で黄色がかった色になる特徴があります。イタヤカエデは非常に硬い木ですが、白く絹のような光沢感があります。ケヤキは古来より和家具に使われ、はっきりした木目があり、1本ごとの個性が楽しめるのが特徴です。そういった特徴を生かしたブランドや商品をお客様にご提案することで、新たな木材の魅力をお客様にお伝えしています。また、一般的に家具製造には不向きと言われるスギやヒノキといった針葉樹も、針葉樹特有の白木の美しさを生かした家具をご提案しています。
日本国内にも様々な気候、地形があり、それぞれの土地に根付いた木があります。カリモク家具は、その木材が生産された地域を把握したうえで、地域特有の木材をご提案できる体制を整えています。これからも、日本の多様な森林が作り出してきた多様な種類の木が持つそれぞれの美しさを、お客様にお伝えし、多様な森林資源の魅力を高めていきます。
「家具材としてのグレードに満たない」と判別され、家具づくりに使われることなく木材チップとして破砕されてしまう木を少しでも減らしたい。カリモク家具はそういった想いで、木材生産地の近くである秋田と北海道に工場を構え、通常の木材流通にも乗りにくい木材を活用してきました。長い時間をかけて育った木を慈しみ、大切に使ってあげたい。私たちは、木と向かい合い、「使えない理由」を探すのではなく「使える方法、活かす方法」を考えたい。家具づくりの現場に、その木を活かす需要が無いなら、その木の潜在的な可能性に光を当てて需要自体を創り出し、提案していくこと。それこそがカリモク家具が大切にしていることです。


